グリーンランド撮影記 Vol.3 — 歩いて、触れて、身体で感じたグリーンランド
- Yuki

- 2024年8月19日
- 読了時間: 12分
Vol.2では、初めて体験した白夜や、4日間のミッドナイトクルージング、そして空から見たイルリサット・アイスフィヨルドなど、海と空から出会ったグリーンランドの景色をお届けしました。
今回はもう少し自然との距離を近づけて、実際に歩いて、触れて、食べて感じたグリーンランドについて書いていきたいと思います。
氷山の間をカヤックで進んだり、想像以上にハードなトレッキングに挑戦したり、厳しい環境の中で咲く植物に出会ったり。
実際にその土地に身を置いてみると、壮大な景色を眺めているだけでは分からなかった発見がたくさんありました。
そして、グリーンランドまで来たからこそ、改めて気づくことができた日本の豊かさもありました。
今回は、そんな旅の中で実際に体験したことを中心にお届けします。
氷山の間を進むカヤック
とても楽しみにしていた日中のアクティビティの一つがカヤックでした。
カヤックは、北極圏の先住民が長い歴史の中で、狩猟や移動のために使ってきた伝統的な乗り物です。
現在使われている「kayak」という言葉も、グリーンランド語の「qajaq」に由来しています。
そんな長い歴史を持つカヤックに乗って、氷が浮かぶ海へ出発しました。
船から眺めていた時とは違って、カヤックはとにかく水面との距離が近い!
パドルを水に入れるたびに、
ちゃぷん、ちゃぷん。
と音が響きます。
海は驚くほど穏やかで、耳を澄ませば鳥の声や水の音、遠くで氷が動く音、そして自分が漕ぐパドルの音が聞こえてきます。
目の前には氷が浮かび、その向こうにはグリーンランドの大自然がどこまでも続いていました。
船の上から眺めるよりも、ずっと自然との距離が近く感じられます。
あれだけ大きな自然の中に入ると、自分という存在が本当に小さく感じられるのですが、不思議と怖さや寂しさはありませんでした。
むしろ、とても穏やかで心地よくて。
初めは景色を眺めながら、
「気持ちいいなぁ。」
と思い、ゆっくりと漕いでいました。
……が、しばらくすると、
もっと漕ぎたい!もっと進みたい!
という気持ちがどんどん湧いてきて、気づけばぐんぐん前へ。笑
最後の方は景色をのんびり眺めていた最初の私とは別人のように、夢中になって爆漕ぎしていました。笑
パドルを動かした分だけ水の上をすーっと進んでいく感覚が楽しくて、もっと先へ行ってみたくなるのです。
目の前には氷が浮かび、顔を上げればどこまでも続く空と大自然。
その中を自分の力で進んでいく時間は、本当に気持ちがよくて、今思い返しても自然と笑顔になります。
静かだけれども大自然の鼓動が聞こえてくるような大迫力な海をゆっくり味わう時間も、夢中になって爆漕ぎした時間も、どちらも含めて忘れられないカヤック体験になりました。
まさかグリーンランドで日焼けするとは
そして、カヤックをしていて意外だったのが、日差しの強さです。
グリーンランドと聞くと、どうしても「寒い」「氷」「雪」というイメージが強かったので、まさかここで日焼けをするなんて、まったく考えていませんでした。
ところが、夏の日差しは想像以上!
夢中でカヤックを漕いでいたら、気づけば手の甲がしっかり焼けていました。
まさかグリーンランドで日焼けをするとは。笑
Vol.2のブログで書いた空撮時の一面の氷と海に反射する光の眩しさに驚きましたが、水面近くまで降りてみると改めて太陽の力を感じます。
すぐそばには冷たい氷が浮かんでいるのに、頭上からは暖かな太陽の光が降り注いでいる。
冷たさと暖かさという、一見正反対に思えるものが同じ場所に存在していました。
これも、実際にその場所へ行って初めて知ったグリーンランドの面白さです。
夏に行かれる方は防寒対策だけではなく、日焼け止めもお忘れなく!
ブログ後半にも書きますが、蚊よけ対策もお忘れなく!
自分の足で、アイスフィヨルドへ
海と空からたくさんの景色を見たあとは、今度は自分の足でグリーンランドの大地を歩きました。
イルリサットには、町からイルリサット・アイスフィヨルド周辺へと続く複数のハイキングルートがあります。
今回歩いたのは、地図で黄色く示されていた約2時間のトレッキングコースです。
「2時間くらいなら、景色を見ながら気持ちよく歩けそう!」
そんな気持ちで出発したのですが……
これが、想像以上にハードでした。笑
岩場を登って、下って、また登って。
舗装された道を歩くようなトレッキングではなく、足元を確認しながら岩の上を進む場所もあり、途中から完全に、
「ぜぇぜぇ……はぁはぁ……。」
となっていました。笑
決して運動不足ではないはずなのですが……!
2時間しっかり身体を動かして、とてもいい運動になりました。
でも、どれだけ息が上がっても、ふと顔を上げると目の前にはグリーンランドの大自然が広がっています。
疲れているはずなのに、美しい景色を見つけると立ち止まってカメラを構えたくなる。
そして撮り終えると、また歩く。
そんなことを繰り返しながら進みました。
海や空から眺めていたグリーンランドの大地を、自分の足で一歩ずつ歩いていることも嬉しくて、ぜぇぜぇ、はぁはぁしながらもとても楽しい2時間でした。
空気は冷たいのに、岩は暖かい
トレッキング中に初めての感覚がありました。
少し休憩しようと、岩の上に座った時のことです。
「あれ?暖かい。」
周りの空気はひんやりとしているのに、座っている岩からはじんわりと暖かさが伝わってきました。
昼間、長い時間太陽の光を浴びた岩が、その熱を蓄えていたのだと思います。
空気よりも、岩の方が暖かい。
考えてみれば不思議なことではないのですが、自分の身体で実際にその温度差を感じると、とても新鮮でした。
目の前にはグリーンランドの絶景が広がっていて、空気は冷たいのに自分が座っている大地は暖かい。
なんとも不思議で、心地よい時間でした。
白夜の太陽は空や海を照らすだけではなく、大地にもちゃんと暖かさを残しているのだと感じました。
グリーンランドでは、目で見る景色だけではなく、こうして身体で感じることにも「初めて」がたくさんありました。
厳しい大地に咲いていた、小さな花
トレッキングをしている途中、思わず足を止めたものがありました。
厳しい大地の中に、小さな花が咲いていたのです。
日本にいると、道端で花を見つけることはそれほど珍しいことではありません。
でも、グリーンランドでは植物が育つことのできる環境や期間が限られています。
そのため、歩いている途中で花を見つけると、
「あ!お花が咲いてる!」
と、それだけで嬉しくなりました。
もちろん、撮影しました。
小さくて可愛らしい花ですが、この場所で花を咲かせていることを考えると本当にすごいことです。
長く厳しい冬があり、気温も低く、強い風が吹く中で大地に根を張り、短い夏の間に花を咲かせています。
そう思って見ていると、可愛らしいだけではなく、とても逞しく感じました。
巨大な氷山を前にした時にも自然の力を感じましたが、足元に咲く小さな花からも同じように生命力を感じます。
自然の力強さは、大きさとは関係ないのだと思いました。
見た目はふわふわ。でも、触れてみると……
トレッキング後に海の近くに建つ教会と、その周辺に広がる白くふわふわとした植物も撮影しました。
その植物の名は「ワタスゲ(Cotton grass)」
遠くから見た時は、タンポポの綿毛のようなものを想像していました。
ふわっと軽くて、触れたら風に飛んでいってしまいそう。
ところが、近くで見てみると、
「あれ?」
思っていたのと全然違うぞ。
見た目はふわふわなのに、実際の毛は想像以上にしっかりとしていました。
タンポポの綿毛のような繊細でエアリーな感じではなく、例えるなら人工毛皮のように密度があり、水にも強そうなしっかりとした質感です。
見た目とのギャップにびっくりしました。
こんなに可愛らしい見た目をしているのに、実際にはとても逞しい。
寒さや風のある北極圏の環境で生きていく植物だからこそ、このような姿をしているのかなと思いながら観察していました。
遠くから写真を撮るだけでは分からなかったことです。
近づいて見たり、触れたりすることで、
「こんなふうになっているんだ!」
と知る。
そんな小さな発見も、旅の楽しさだと思います。
中学生の頃から一緒だった靴との別れ
トレッキングでは思いがけない別れもありました。
今回履いていたトレッキングシューズは中学生の頃から履いていたもの。
長い間、いろいろな場所を一緒に歩いてきた一足です。
ところが、グリーンランドの岩場を歩いている途中で、ついにソールが剥がれて壊れてしまいました。
「ついに、この時が来たか……。」
と思いました。
でも、中学生の頃からここまで一緒に歩いてくれたことを考えたら、本当によく頑張ってくれました。
しかも最後に歩いた場所が、日本から約10,300km離れたグリーンランド。
ずいぶん遠くまで一緒に来たね。
今までいろいろな場所へ連れて行ってくれて、たくさん歩かせてくれて、本当にありがとう!
そんな気持ちで、グリーンランドでお別れしました。
これも今となっては、大切な旅の思い出です。
夏のグリーンランド、蚊が多いです!
そして、これから夏のグリーンランドへ行かれる方に、ぜひお伝えしておきたいことがあります。
夏のグリーンランド、蚊が多いです!
声を大にして言いたいです!笑
これは私も完全に予想外でした。
「こんなに寒い場所に蚊なんているの?」
と実際に訪れるまで半信半疑だったのですが、夏になると雪や氷が解けて水が溜まる場所が増え蚊が発生します。
撮影中もかなり飛んでいて、そして刺されると結構腫れます。。。
美しい景色に夢中になっている間に、
「いつ刺されたの!?」
ということも。笑
これから夏にグリーンランドへ行かれる方は、虫除けグッズをお忘れなく!
そして先ほどのカヤックの話の通り、日差しも侮れません。
虫除けと日焼け止め。
この二つは、マストです!
グリーンランドで、タイ料理?
たくさん歩いて、たくさん撮影していると、もちろんお腹も空きます。
旅先での食事も、私にとっては楽しみの一つです。
グリーンランドはデンマーク王国の自治領で、現在もデンマークとは人や物の行き来を含めて深いつながりがあります。
そしてイルリサットは世界遺産のアイスフィヨルドや巨大な氷山を見るために、国内外から多くの旅行者が訪れる町でもあります。
そんな北極圏の町を歩いていて、少し意外だったのが……
タイ料理屋さんがあること!
日本から約10,300km離れたグリーンランドまで来て、タイ料理を食べるとは思っていませんでした。笑
でも、これが美味しかった!
撮影やトレッキングで身体を動かした後にいただく温かい料理は、それだけでもほっとします。
グリーンランドでは伝統的に、その土地で得られる魚介類や海獣、陸上動物などが食文化を支えてきました。
一方で、現在のイルリサットは観光業も盛んで、町ではさまざまな料理を楽しむことができます。
遠い北極圏の町で、現地の文化だけではなく、こうして異なる国の食文化に出会えたことも面白い経験でした。
「グリーンランドでタイ料理を食べたなぁ。」
と、今でも思い出します。
日本の豊かさ
食べ物でもう一つ印象に残ったのが、フルーツでした。
グリーンランドでは厳しい気候や永久凍土などの自然条件によって農業ができる場所や栽培できる作物が限られています。
特に私が滞在したイルリサットのような北部の町では、多くの果物や野菜が島外から運ばれてきます。
だからこそ、日本では当たり前のように目にしているフルーツが、とても貴重なものに感じられました。
日本では春になると苺を食べ、夏には桃やスイカ、秋には梨やぶどう、冬にはみかんを楽しむことができます。
でも、世界のどこへ行ってもそれが当たり前なわけではありません。
四季があり、豊かな土があり、美味しい水があり、その土地のミネラルがあり、そこに生産者の皆さんの手が加わることで、私たちは季節ごとにさまざまな食べ物をいただくことができます。
遠く離れたグリーンランドまで来たことで、逆に日本の自然や土の恵みのありがたさを改めて実感しました。
旅をすると訪れた場所の素晴らしさを知るだけではなく、自分が暮らしている場所の素晴らしさにも気づかされます。
知らなかった世界に出会うことで、それまで当たり前すぎて見えていなかったものが、急に特別に見えてくる。
それも、私が旅を好きな理由の一つなのだと思います。
地上から見つけた、グリーンランド
海や空からグリーンランドの圧倒的な自然を眺めるだけでなく、自分の足で歩き、カヤックで海へ出て、植物に近づき、大地に触れることで、また違ったグリーンランドを知ることができました。
巨大な氷山だけではなく、その足元には小さな花が咲いています。
冷たい空気の中でも、太陽の光を受けた岩には暖かさが残っていました。
寒い国だと思っていたのに日焼けをして、まさかの蚊にもたくさん出会いました。笑
実際に行ってみなければ分からないことばかりです。
そして、知れば知るほど、
「自然って、本当に面白い。」
と思いました。
遠くから眺めれば圧倒され、近づいてみれば新しい発見があり、触れてみると想像していたものとはまったく違う。
グリーンランドで過ごした6日間は、そんな驚きの連続でした。
アイスランドを訪れた時にも感じたことですが、グリーンランドの圧倒的な自然を前にすると、私たち人間が自然を所有しているのではなく、自然の中に私たちが住まわせてもらっているのだと再認識させられます。
自然にしか生み出すことのできない美しさがあり、人間の叡智や、人間だからこそ生み出せる美しさもあります。
どちらか一方ではなく、どちらも大切にしながら共存していく。
この旅ではたくさん考えました。
次回は、グリーンランドで感じた自然との共生について。
そして、なぜ私はこの景色にこれほど心を動かされたのか。
この旅を経て改めて感じた私が写真を撮る理由や、グリーンランドで撮影した作品に込めた想いについてお届けします。
グリーンランド撮影記も、いよいよ次回が最後です。
最後までご覧いただき、ありがとうございました。
clear Yuki






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